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保育料の階層はどう決まるか — 市民税所得割額と9月の切り替え
公開: 2026年9月4日
認可保育園の保育料の表を開くと、「D5階層」「所得割課税額 57,701円以上 77,100円以下」のような行が10〜30段並んでいます。自分がどの行なのかを正しく引くには、所得割額とは何か、いつの年度の額を見るのか、控除はどう扱われるのかを知る必要があります。この記事では、当サイトが42自治体の案内ページを読み込んで確認した共通のルールと、自治体ごとの違いをまとめます。
3歳児クラス以上の保育料は国の制度で無償、0〜2歳児クラスも東京都内の区市町村では令和7年9月から無償です。この記事が扱うのは、それ以外の自治体に住む課税世帯の0〜2歳児クラスの保育料です。自治体ごとの額の幅は別の記事にまとめています。
階層は「父母の市町村民税所得割額の合計」で決まる
保育料の階層は年収でも所得でもなく、市町村民税(市民税・区民税)の所得割額で決まります。父と母の所得割額を合算し(つくば市の案内では「両親の市民税所得割額の合計により決定」)、その額が階層表のどの範囲に入るかで月額が決まります。祖父母と同居していて父母の収入が少ない場合など、祖父母の税額を合算する自治体もあります(藤沢市は「児童の父母(又は祖父母)」と明記)。
所得割額は「課税される所得×税率(標準6%)−税額控除」で計算される住民税の一部で、均等割(定額の部分)は含みません。年収が同じでも、扶養の人数や社会保険料、各種控除で所得割額は変わるため、「年収◯万円なら◯階層」とは一概に言えません。
所得割額はどこに書いてあるか
- 給与所得者: 毎年5〜6月に勤務先経由で配られる「住民税の特別徴収税額の決定通知書」に、市民税(区民税)の所得割額の欄があります
- 自営業・年金の方: 6月ごろに自治体から届く「納税通知書」に同じ欄があります
- いずれの場合も: 自治体の窓口で「課税証明書(所得・課税証明書)」を取れば所得割額が記載されています。転入してきた方は前の自治体の証明書が必要になることがあります
注意したいのは、通知書に書かれた所得割額をそのまま階層表に当てはめてはいけない自治体があることです。次の3点で数字がずれます。
4〜8月分は前年度、9月分〜は当年度の税額
住民税は前年の所得に対して6月に確定するため、保育料も年に2回、階層を引き直します。42自治体の案内はほぼ同じ表現で、川口市は「4月から8月までは前年度の、9月から3月までは当該年度の市区町村民税額に応じて決定します」、千葉市は「同一年度中に利用者負担額が増減することがあります」と書いています。
つまり令和8年4〜8月分の保育料は令和7年度の住民税(令和6年中の所得)、令和8年9月〜令和9年3月分は令和8年度の住民税(令和7年中の所得)で決まります。育休明けで前年の所得が少なかった世帯は4〜8月は低い階層になり、9月から上がることがあります。逆に育休に入って所得が減る世帯は、翌年9月まで高い階層が続きます。
川崎市のように、この切り替えに合わせて階層表そのものを「令和7年9月〜令和8年8月分」の形で公表する自治体もあります。当サイトが「令和8年度」と「令和7年9月〜」の表を混ぜて載せているのは、出典側の区切りがこうなっているためです。
住宅ローン控除・ふるさと納税は反映されない
通知書の所得割額は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)や寄附金控除(ふるさと納税)などの税額控除を引いたあとの額です。しかし保育料の階層判定では、多くの自治体がこれらの控除を引く前の額を使います。川口市の案内は明確で、「保育料を決定する際の市区町村民税額は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や寄附金控除(ふるさと納税等)等の適用を受ける前の額により決定します」とあります。横浜市も「税額控除前所得割額(調整控除後)」と書いており、調整控除だけは引いた額を使います。
ふるさと納税で住民税が減ったから保育料の階層も下がる、とはなりません。通知書の所得割額に、控除された額を足し戻して階層表に当てはめてください。どの控除を足し戻すかは自治体の案内に列挙されているので、必ず自分の自治体のものを確認してください。
神戸市は令和8年4〜8月分について「定額減税反映後の市町村民税額」を使うと明記しています。令和6年の定額減税のような一時的な減税をどう扱うかも自治体で違いうるため、案内の注記を読むことをおすすめします。
政令指定都市に住んでいる人は「8%を6%に換算」
政令指定都市では2018年度から市民税の税率が6%から8%に変わっています(県費負担教職員の移管に伴う税源移譲)。ところが保育料の階層表は全国共通の枠組みで6%を前提に作られているため、政令市に住む世帯は通知書の所得割額を6/8倍して階層表に当てはめます。札幌市の案内は「札幌市を含む主な政令市の所得割は『税率8%』です。しかし、保育料の計算には『税率6%』に直した金額を使います」、大阪市は「市民税の税額控除前所得割額に6/8を掛けた金額をもとに」と説明しています。
自治体によって書き方が逆のこともあります。新潟市は階層表の方を8%換算で示し、「市民税通知には8%課税額が表示されているため、8%課税額に換算した『市民税額(8%課税額)』で確認してください」としています。表の数字が6%基準か8%基準かを確かめてから、通知書の額と比べてください。名古屋市は5.7%相当と、換算率が独自です。
政令市以外に住んでいて政令市に通勤している場合は関係ありません。相模原市の案内にあるように、「指定都市が市民税額を決定している場合」に換算するもので、住民税をどこに納めているかで決まります。
保育標準時間と保育短時間で額が違う
階層表には「保育標準時間」と「保育短時間」の2列があります。標準時間は1日最長11時間、短時間は最長8時間の利用で、就労時間(自治体の基準では月120時間程度が境目)によって認定されます。短時間の方が数百〜数千円安く設定されているのが普通ですが、短時間認定で8時間を超えて利用すると延長保育料がかかり、足立区の案内にあるように「別途延長料金がかかります」。
当サイトの階層表は標準時間と短時間を別の列で持ち、比較表では標準時間だけを並べています。短時間の額を混ぜると、別の条件の額を比べることになるためです。
第2子・第3子の数え方は自治体で違う
国の基準では、保育園等を同時に利用しているきょうだいの中で年上から数えて第2子は半額、第3子以降は無償です。上の子が小学生になると「同時利用」ではなくなり、下の子は第1子として数えられます。ただし年収360万円未満相当の世帯(八王子市の案内では「市民税所得割合算額が57,700円未満、ひとり親世帯等は77,101円未満」)では同時利用の条件が外れ、上の子の年齢に関係なく第2子半額・第3子無償です。
ここに自治体独自の緩和が上乗せされます。京都市は所得や同時入所を問わず第2子から無償、さいたま市は令和8年9月から「第1子の保育園等への在籍状況や年齢に関わらず原則半額」。横浜市は「きょうだい区分」を独自に定めていて、階層表そのものに第1子・第2子の列があります。「第2子」と書かれていても、上の子をどう数えるかが違うので、必ず自治体の条件文を読んでください。当サイトの自治体ページには、要約せず原文を載せています。
非課税世帯・ひとり親世帯・未申告の扱い
- 市町村民税非課税世帯: 0〜2歳児クラスも国の制度で無償です。均等割だけ課税されている世帯は非課税ではないので注意(札幌市は「所得割が非課税で、均等割のみ課税されている世帯はC階層」)
- ひとり親世帯等: 低い階層で無償や軽減があります。横浜市は「C階層、D1〜D5階層はE0〜E5階層になります」と別階層を設け、堺市は所得割77,101円未満のひとり親世帯等で無償
- 住民税が未申告: 収入が無くても申告しないと最高階層に決定されます。仙台市・川口市・横浜市・静岡市・神戸市・福岡市がそろって明記しており、静岡市は「収入のない方も、必ず市民税の申告をしてください」と念を押しています
「年収別の早見表」が成立しない理由
ここまでの要素を並べると、保育料は「所得割額(控除の足し戻しと政令市換算のあと)×年度の切替×時間区分×きょうだいの数え方×世帯の状況」で決まることが分かります。しかも階層の切り方は自治体ごとに11〜36段と違い、同じ所得割額でも自治体が違えば別の階層です。全国共通の「年収500万円なら月◯円」という早見表は、この構造上作れません。
当サイトができるのは、自治体ごとの階層表を所得割額の範囲つきで正確に載せることまでです。収録42自治体の一覧から自分の街のページを開き、「保育料」の節で、通知書の所得割額(必要なら足し戻し・換算をしたもの)を階層表に当てはめてください。年齢クラスは4月1日時点の年齢で決まり、年度途中で3歳になっても年度中は3歳未満児の額のままです(川崎市・広島市の案内)。
用語の短い説明はデータの読み方にもあります。
この記事の出典
- 各自治体の保育料(利用者負担額)の案内ページと階層表(42自治体)(2026年7〜8月に取得。本文の引用は各自治体ページの注記欄に原文を掲載)
- こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化」(3歳以上と住民税非課税世帯の0〜2歳の無償化、年収360万円未満相当世帯の多子軽減)
記事中の数値は執筆時点の集計です。制度は年度途中でも改定されるため、実際の適用は必ず各自治体の公式情報でご確認ください(免責事項)。